生徒会長様の憂鬱

真っ直ぐに射抜かれたような言葉。
突然彼女は俺の腕を掴んでそう、礼を言った。

高鳴った鼓動は、指先が痛くなるほど。


何となく顔を見られないと思った俺は、艶のあるその視線から逃げるように立ち上がろうとしたが、捕まったままの腕を振り解く余裕はない。



「傍にいて」




駄目押し。
と言わんばかりの彼女の言葉。


腹立たしいほどに、俺は混乱していた。
どんな蜜であろうと、取り乱した事はなかったし笑って振り解く余裕を失ったことはなかった。





相手が、病人だからだろうか。




どうしてこの暖かい小さな手を振り解くことが出来ないのか、自分には理解が出来ない。


真っ直ぐ見上げて、俺の返答を待つそいつは捨てられた子犬の様にも見えた。





――…、くそ…。調子狂う…





「わかったよ、居てやるから。早く寝ろ」




俺の、完敗だ。




その言葉を聞いた途端、花が綻ぶような笑顔を見せた彼女は、そのままゆっくり目を閉じた。




――…そういう笑い方、卑怯だろ







熱くなる体を誤魔化すように、俺は携帯電話を手に取る。




「あぁ俺だ。先、帰っていてくれ」





全く、あれもこれも風邪のせいだ。




こんなに胸を焦がす感情を、俺は知らない。




fin




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