生徒会長様の憂鬱

生徒会の集まりがない日は正直久しぶりで、最近は冬休み中に外部に受験する生徒達の為に講義を開くとか、卒業式をどうするだとか、そんな話し合いが行われていた。


かじかんだ指先に息を吹きかけながら昇降口を出て前庭を歩いていると、校門近くにあるすっかり花がなくなった殺風景な花壇の真ん中に、寝癖がついた無造作ヘアーが見える。




「ハル」




何気なく声をかけると、ピクリと止まった体が振りかぶるように動いて彼が顔を上げた。




「あーリン!いつもより帰るのおそいねー」




冬だと言うのにブレザーを汚く捲り上げて肘から下が土だらけだ。

私がいつもより帰りが遅いのは、担任と話をしていたからで、それは勿論今後の進路について。
ようやく折れた教師の諦めたような顔が目に浮かぶ。



「なにしてんの?」



「んー?土ひっくり返してんの!」


手の甲で鼻の頭をこすり、そこに土が乗ったことも気付かずにハルは小さく手招きをした。

つられて寄ってみると、そこにはすっかり柔らかくなった土が広がっている。




「ここ、コスモスがあった場所?」



「そだよ!よく覚えるねーえらいえらい」


「こるぁ!土まみれの手で頭に触んな!」



「えへへー」



さして悪気もなさそうに笑ったハルは、大きなシャベルを手に取り作業を再開した。



「ひっくり返すってなに?」



「んーとね、天地返しってゆーんだけど、知ってる?」




「知らない」




聞こえているのか聞こえていないのか、ハルのシャベルを持つ手が止まる気配はない。




「こーすると、ここに植える花が楽しくなる」



「楽しくなる?よくわかんないけどまたコスモス植えるの?」


園芸についての知識は残念ながら皆無だ。
掘り起こされては晒されていく土を見ながら、私は花壇からはみ出たそれを足で中に入れてやる。




「ここには今度違うのを植えるんだよー」



「へぇ、何植えんの?」



「アゲラタム!」



「あ、アゲ?」




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