姫に王子のくちづけを…
どうしよう…
どうひよう…あわわ、かんじゃった
その間にも女の人の甲高い声は大きくなりつつある
私の顔は赤くなりつつある…
こ、こんな所でこ、こんなことする方が間違ってんだよ…
わ、私は悪くないもんね…
…しょうがない、この資料は後でもっていっておこう
と、頭の中で1人で自己完結して
そろそろと足で音を立てないようにドアを閉め始めた
『あぁっ…彼方っ…もっと…』
彼方
その単語が聞こえてきたとき
頭の中が真っ白になって
思わず大量の資料を落としてしまった
バサァァァ
『きゃっ!…誰よ!』
女の人が悲鳴を上げていたが
私はそんな事お構いなしに
ただただ足を前へと進めていた…
この頬に流れるものは
絶対に涙なんかじゃないと思いながら…