ダンデライオン
そのあと、悠斗くんはあたしを送ってくれた。
その間は一言、二言しか話さなかった。沈黙に流れる洋楽。何曲も流れたけど悠斗くんの"思い出"の曲は流れることはなかった。

「あれから、あの歌は聴かなくなったんだ。」

「え?」

「あれは、俺が最初で最後に本気で好きになった女の子との思い出の歌なんだ。」

「そうなんですか…」

胸が痛んだ。
悠斗くんが本気になった女の子。それは一体どういう人なんだろう。きっと、凄く素敵な人に決まってる。

「ずっと、引きずってたのかもな。でも…今は吹っ切れた。」

「そうなんですか…」

「その女の子と付き合ってたのは高校時代。昔のことなのにずっと引きずってるなんて痛いしね。」

苦笑いを浮かべた。
そんなに、その人のこと大切だったんだ。長い間、想ってたんだ。

「もう、あの人を思い出す日がないんだ。あの歌を聴いても苦しくない。」

「…そうなんですか。」

さっきからずっとそればっか。でもそれしか言えないんだ。

「ある女の子のお陰でね。」

「ある女の子…?」

「着いたよ。」

気付いたらもう家に着いてた。悠斗くんはただ笑って、車から降りて助手席のドアを開ける。

「今日は楽しかった。ありがとう。」

「あたしもすっごく楽しかったです。」

深々と頭を下げた。感謝の気持ち届くかな。

「また今度、ね。」

「はい!」

車が見えなくなるまであたしは見送った。
悠斗くんを、昔の恋から決別させた女の子は一体どういう子なんだろう。…やっぱり芸能人、なのかな。
溜め息が零れたと思ったら、涙も零れた。

今日は泣いてばっか…。
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