リナリア

 奈菜の一言であたし達は学内で一番小さくて、ケーキが美味しいカフェに入る事にした。


 テーブルに着くなり奈菜は煙草に手を伸ばし「信じられないわ」と呟く。


 その後に続いた言葉は「平津君、最低ね」ってものだった。




「最低かどうかは知らないけど、壮太君、もう彼女出来たんだね」





 そう。


 つい、昨日。


 別れたばっかなのに。


 もう、彼女がいるなんて。





「今時の若者だよね〜」


「佐智!!!」




 へらっと笑いながら言ったら奈菜に怒鳴られた。


 ヤバい、奈菜、本気で怒ってる。


 奈菜が怒ると怖いんだ。


 物凄く美人だから、その顔に怒りが現れると他の誰に怒られるよりも凄みも迫力もあって、その怒りは余計に大きな物に感じる。


 あぁ、しまったな。




「あんた、ほんっとに馬鹿!!!」




 さっきまでは壮太君に対しての怒りだったのが、対象があたしに変化してしまった。「ごめんなさい」そう謝ると、奈菜はバツの悪そうな顔をした。




「あたしの方こそ、ごめん。やだ佐智、泣かないで」


「え?」



 眉毛を歪ませる奈菜に言われて自分の頬を触ると、確かに涙が流れていた。


 あぁ。


 さっきの、思ってたよりショックだったんだな。






 そう思って、思いだす。
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