Stand by・・・
溢れ出した気持ち
おれは携帯と財布だけ持って、家を飛び出した。

アパートの階段を駆け下り、車に滑り込む。

「刹那!ちゃんと憑いてきてるな?」

おれは誰もいない助手席に語りかけた。

「・・・・・・うん」

やけに長い沈黙のあと、彼女のかすれそうな声が聞こえた。
おれは慌しくエンジンをかけ、車を発進させた。


大谷は、これから手術をすると言っていた。

つまり、刹那は死んでいない。

生きているということだ。

おれと一緒にいる刹那は、生霊ということだろうか。

ともかく、まだ間に合うハズだ。

時計坂記念病院は、そんなに遠くない。


しかし、何となく幽霊につけた名前が、本人の名前だったなんて・・・

今更ながら偶然のすごさに苦笑いしてしまう。
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