守ってあげたい 〜伝染〜
関口隼人
高校時代からサッカーで鍛えた隼人は人一倍運動神経には自信があった。

考えるよりも体が反射的に動き、相手ディフェンダーを翻弄したものである。

いくつかの有名大学や実業団からも誘いはあったが、元々遊びでサッカーをしていた隼人は誘いをあっさり断り、地元の蓬莱学園大学に進んだ。今はたまに遊びでサッカーをやる傍ら、得意のカラオケをいかしてバンドのまね事をやっている。

音楽にはずぶの素人だったがルックスのよさと、元々持っているスター性で市内のライブハウスではそこそこの人気を得ていた。

決して努力家ではないが今でも朝のランニングと筋力トレーニングは日課のようになっていて、日曜以外はこなしている。

そうやって体を鍛えていたのがよかったのだろう。その瞬間も隼人は考えるより先に体が反応して道路へ飛び出していった。

青信号の交差点、横断歩道の左側僅かのスペースに駐車した軽四輪の影に隠れて見えなかったのか、信号を渡ろうとした女性に向かって右折するライトバンが減速せずに交差点に侵入していた。

普通なら「あっ」と思い状況を見てしまう所だろう、しかし歩行者がライトバンに気がつくよりも前に隼人は女性の腰をつかみ手前に引き戻していた。
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