守ってあげたい 〜伝染〜
「なんだ、あんたか脅かすなよ。いつの間に来てたんだ?」

影はそれには答えずカバンの中をなにやら探っている。

「しかし酷いザマだよ。あんなに気の強い女だと思わなかった。耳なんか食いちぎられるかと思ったぜ」

「……」

「惜しい事したなあ。ありゃあ着痩せするタイプだね。胸の感触がまだ残ってるよ。たまらねえなあ」

男はニヤニヤしながら空を手で掴む仕草を繰り返した。

「まあ男知らないような感じじゃなかったけどな……おい!いきなり現れたくせに何とか言えよ。誰のせいでこうなったと思ってんだ」

「……」

「口が聞けねえのか?。まあいいや。これであんたともサヨナラだ。降りてくれ」

前を向いてキーを回す。乾いた音をたててエンジンが唸り始めた。その音にかき消され後ろの様子を気にしなかったのが男の不運だったかもしれない。


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