守ってあげたい 〜伝染〜
後悔
「お釣りはいいです」

はだけた胸元を好奇の目で見つめるタクシー運転手から逃げるように、晶は家の前で車を降りた。

タクシーの運転手とはいえ、男と一緒に車という密室にいるのは耐えがたい苦痛だったのだ。

小走りに階段をかけあがり自分の部屋に飛び込む。

破られたシャツを脱ぎ捨てた晶は等身大の鏡の前に立った。

無言で自分の体を見詰める。押さえられた鎖骨の当りが少し赤くなっている程度で外見は異常なかった。

だが真左人に裏切られたやりきれなさと、初対面の男を信用した自分の馬鹿さ加減に胸が痛い。

鏡の向こうから誰かに見られているような気がして、晶は下着越しに両手で胸を隠した。

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