流星群【短編集】
今日はこの夏最後の花火大会だった。
会場近くに職場がある多江は、休日の電話番として出勤していたが、そのまま浴衣に着替えて花火を見に行くつもりでいた。
今年新調したばかりの浴衣は、鮮やかな朱に睡蓮。
普段から着る機会の無い浴衣を今日こそはと持参していたのだが。
昼一のメールが多江の気持ちを一瞬で沈ませた。
一緒に行こうと約束していた亮佑からのメールには、先約があったのを思い出したから行けない、と書かれていた。
多江は、ごめんなさいと顔文字付きで書かれたメールに、不可抗力と腹をくくったつもりだったが。
時間が経つにつれ、沸々と腹立たしさが込み上げてくる。
元々、納得なんて出来なかったのだ。