†Orion†


だけど――……


あんなに好きだった人を、ある日突然きっぱりと断ち切ることなんかできない。

無理に断ち切ってしまえば、余計に思いは募る。

それこそ突拍子もない行動に出てしまいそうだった。



でも、俺が店に居残る理由はそれだけじゃない。

俺に期待してくれている料理長の思い。

何かに打ち込むこともなく、ただ淡々と生きてきた自分。


これまでの淡々とした生活と決別して、社会人になる自覚をもつには、いい機会だと思った。





「あれー? 雅人っち、もうあがりー?」


「あ? あぁ」



私服に着替えて更衣室から出ると、これから休憩に入る三枝さんと出くわす。



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