†Orion†


俺の胸は、ムカムカと気持ちの悪い怒りに襲われてしまう。



「そんな状況がずっと続いてさ。優菜も俺の気持ちを知っているくせに……、あいつ、何も言わなくて」


「それは……浩平さんにはっきり言われるのを待っていたんじゃないんですか?」


「………」




無言で力なく笑う浩平さん。



「でも、このままじゃいけないと思って、別れようと決めた矢先に優菜が妊娠して……」



浩平さんが優菜さんの妊娠を知ったのは、優菜さんの友達を通してだったらしい。


そのときの赤ちゃんが、奈緒ちゃんで。

優菜さんは奈緒ちゃんがお腹のなかにいることを、浩平さんに言えなかったんだ。

浩平さんがずっと、自分以外のひとを思い続けていたから。



「あいつ、自分から別れを告げて、一人で奈緒を生んで育てるつもりだったらしい」


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