†Orion†


大学を卒業して、正式に採用が決まった。


真新しいスーツを着て、銀色の社員バッジを胸につけ、店に出勤する。

学生の頃のように、寝癖つけたまま出勤とか、遅刻なんて御法度。


毎晩、三個の目覚まし時計のセットは怠らない。

朝は朝で、出勤の二時間前に起きて、寝癖と格闘する。




実家の両親に、それまでバイトしていたファミレスに社員として就職することを伝えたのは、内定をもらったその日だった。



“まぁ、おまえが社員になってでも続けたい仕事なら、俺は何も言わん”



商社勤務の親父は、電話越しに素っ気無くそう言った。


直後に電話を替わったお袋は、クスクスと笑いながら、



“たまには帰っておいで。お父さん、寂しがっているわよ”



と、不器用な親父をフォローした。


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