†Orion†

*夕暮れの観覧車*



奈緒ちゃんとさくらちゃんは、お化け屋敷に慣れているのか。

薄暗い通路を、順路に沿ってどんどん進んで行った。


途中途中である、からくり仕掛け。

キャーと悲鳴を上げるものの、決して泣き叫びはしない。

むしろ、とても大喜びしている。



「……無理。動けない……」



優菜はすっかり怯えて、足が動こうとしない。


実のところ、俺もそうだ。

目には涙が浮かぶ始末で。本当に情けないやら……。



「行こう。奈緒ちゃんたち、もう出ているかも」


「う……、うん……」



優菜の手をキュッと握りしめて、ゆっくりと歩き始める。


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