†Orion†
立ち止まって、繋いでいた優菜の手を外すと、俺は優菜の方に身体を向けた。
むき出しになったろくろ首は、次の客に備えて井戸の中へと姿を消す。
「認めてもらえるのに、きっと時間がかかると思う。でも、絶対に諦めないから」
「……うん……」
そっと優菜の身体を引き寄せる。
客の悲鳴と、臨場感あふれるお化け屋敷のBGM。
ここは、愛を語り合うのに最適な場所じゃない。
むしろ、避けたいくらいだったけれど……。
それでも俺は、優菜の頬に手をあて、少し開いた唇にキスを落とした。
「あたしも、頑張るよ」
キスのあと、優菜ははにかんだように笑って言った。