†Orion†
「待っているなんて、言わないで。このさき、あたし以上にいい人と出会える可能性だってあるんだから」
……そんなこと、あり得ないよ。
俺にとって、君がどれだけ大切な存在なのか。
本当に……分かっていないんだな。
「じゃあ、“気長に待つよ”。これでいい?」
少しおどけたように俺が言うと、優菜は鼻声で「バカ」と笑った。
「でもさ……」
身を乗り出して、助手席にいる優菜をキュッと抱きしめる。
瞬間、優菜の肩が大きく震えて、それまで静かに涙をこぼしていた彼女は、感情の赴くがままに泣き出した。