†Orion†
その一件があってから、俺の視線は常に杉浦さんの姿を追うようになっていた。
当たり前の小さなことでも、“ありがとう”と言ってくれる。
いつも俺より先に帰る時、“頑張ってね”と声をかけてくれる。
きっと、そんな彼女のことを俺は好きになったんだ――……
「ちょっと雅人? 人の話、聞いてる?」
「え? あぁ……」
過去の回想から戻った俺は、ニッと笑って弘美に言った。
「彼女の、内面の優しさを好きになったんだよ」
俺はまだ、杉浦さんのことを深くは知らない。
得た情報は、誰もが知っているようなことばかり。
それでも俺は、彼女をとても好きなんだ。