†Orion†


翌日。

杉浦さんに会えない俺は、だらしない格好で出勤する。


寝癖のついた髪はボサボサ。

服もその辺に脱ぎっぱなしだったものを、適当に着る。


どうでもいいや。

どうせ、休みなんだし。

寝癖はコック帽でじゅうぶんにごまかせるし。

オシャレしたって、誰に見せるんだよ。



アパートから店まで、歩いて十分ちょっとの距離。

土曜日の早朝は道を行きかう人の数も少ない。

すっかり花びらを落とした桜の並木道をダラダラと歩いていくと、停止したままの店の回転看板が見えてくる。



開店準備を任されるようになって持たされた、店の裏口の鍵をジーンズのポケットから取り出す。


だけど……裏口に着いた俺は、今日はその鍵の出番がないことに気づいた。



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