†Orion†


「さくらが……っ……。早く……誰か助けて……」



わっと泣き崩れる優菜。

その傍らで奈緒ちゃんは、消防隊員に“一階の一番右端の部屋に妹がいる”と必死に訴えている。



「………っ……!」



……頭で考えるより早く、俺の足が動く。



覚えているのは……


近くの住民が持ってきたと思われるバケツに入った水を、頭からかぶったこと。

そして、周囲が必死になって制止するのを、力のかぎり振り切ったこと。



それから……

奈緒ちゃんが言った“一階の一番右端の部屋”を目指して、全速力で走ったこと。


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