紫黒の瞬き
「いや。今からだ。」

「じゃあ、一緒に食うか。」

アサガはそう言って麻袋をジンに渡した。
ジンが袋の中身をテーブルの上にバサッと音を立てて広げる。
そうすると一瞬にして甘ったるい香が一面に広がった。

テーブルの上には赤紫の果物。
名前は知らないが森の中でよく見かける果実だった。

「さあさあ、食べようじゃないかー………」

アサガは尻切れトンボのように言葉を途中で止める。
そしてその目は私を見てジンを見て、また私に戻ってきた。
その仕草に私は意味が分からず、きょとんと首を傾げるばかり。

「あー……そう言えば、名前、聞いてないよね?」

申し訳なさそうにアサガはジンの方を見る。

「おい。」

私は頭の上から降り注ぐ声に反応して、その方向を見上げた。

「なんて名前だ?」

ぶっきらぼうな言い方だが、しっかりと私の眼を見つめて訊くジンに、私は躊躇うことなく応えた。

「……オルビナ…」




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