空と海の絵かき歌
昔の話、宝物

「どこ行くの?」



小さい頃。
おトナリの石川家に遊びに行ったら、お揃いのスケッチブックを持った晴天とじぃじが出てきた。




「海じゃ。海汐も行くか?」




麦わら帽子を被ったじぃじがこう言ってわたしの頭を撫でてくれるけど、



「海汐は来たらダメじゃ」



キャップを後ろ向きに被った晴天は、恐い顔してわたしを睨んでた。


「なんで?」


「今からは師匠と弟子なんじゃ、遊びと違うんじゃ」



一緒に来るなって言われて唇を尖らせたわたしを、晴天は眉間にシワまで作ってもっと突っぱねる。




きっとそれは、小さい晴天にとって真剣で大切な時間だったから。



でも、そんなことが小さいわたしには全然わからなくて、



「えー。ズルいよ、晴天だけじぃじのお絵かき教室」


「お絵かき教室じゃないっ。修行やっ」



晴天に仲間外れにされたってことが、寂しくて仕方無かった。



「晴天~、そう言わんと海汐も連れて行ってやれ」



「ダメじゃ」



頑として譲らない晴天にじぃじが肩を竦めて小さく謝ってくれる。

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