桜の木の下で…


少し開けた場所に1本の桜の木がそびえ立ち、満開の花を咲かせていた。

風が吹けば、その花弁を散らし桜吹雪となって見るものの眼を楽しませる桜。


月はその見事に咲き誇る桜の木の天辺から根元までの全てをぼんやりと浮かび上がらせていた。

そしてそこに佇むように立ち尽くす1人の女。
眼を凝らして見れば大きなシャベルを片手に何かを見下ろしている。

それを照らし出す丸い月が異様な輝きを放っているようにも感じられる。
外灯のないこの場所では月の光が唯一のものであるからかもしれない。


女が見下ろしていた物に眼を移せば、シートのようだ。
しかしそのシートによって何かが隠されている。

盛り上がりを見せるそのシートへと手をかける女。
ばさりと微かな音と共に剥がされたシートの中身にごくりと唾を飲み込んだ。

横たわる女性の死体。
その死体の眼は開いたままで、まるで眼が合ったような錯覚に陥る。
恐怖の顔に固まったままの女性の死体と。

ぞくりと背中を這い上がる悪寒。恐怖。
嫌な汗が身体中から噴出す。

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