BE FREE,GO SOUTH
大好きだった
大切な愛(いと)しい人
一緒にいるのが
あたりまえだった…

そんなあなたの突然の死が
僕を蝕(むしば)んで
人を愛する力も
好きになる気力も
奪っていった

僕の身体を駆け抜ける、
他人の好意も移ろう季節も、
何も残りはしない

深々と永遠に降り積もる雪と
透き通ったしじまの樹海に、
時々雪の重みに押し潰された
木の裂ける
最期の声がこだまする
抜け殻の僕も
いつかその時が来るのだろう

ひたむきだった真夏の十代はとうに陰をひそめ、
加齢とともに
生きがいをなくした、
さまよう君が
雪化粧に魅せられて、
僕の心を開こうとする

君の愛惜(あいせき)が白夜のように
確かに光を放っていても、
死を待つ僕は
冷たい裸体を曝(さら)すだけ

たとえ言葉を尽くしても
君には決して理解できない

そんな僕を
君はいつまで悼(いた)み、
慈(いつく)しんでくれるのだろう

感謝を形にする
力すら失った僕は、
ごめんなさい、
さようなら
と呟(つぶや)いて
自ら崩れ堕ちる

君の心に
傷痕(きずあと)だけを遺(のこ)して逝(い)く、
僕をどうか許して

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