BE FREE,GO SOUTH
壊れた僕
「新宿3丁目に行ってください」

流れる夜の街の灯りを車窓越しに眺めながら、

僕はいつもの袋小路の思考に囚(とら)われていった。

いつまでこんなことを続けるのだろう。

もう疲れた。すべてに疲れきったんだ。

人間関係にも、人生にも。

僕は仕事に生きることも出来ない。

安らぐ家庭も無い。

何のために生きているかわからない。

毎日、すでにさほど効かなくなった3千円のユンケルを、時には数本飲み、

求心を飲んで動悸(どうき)を抑え、

コーヒを何杯も飲みながら、ただひたすら働き、タクシーで帰る生活。

もう十分頑張った。

この十数年間やれるだけのことはやったんだ。

壊れた身体が休息を訴えている。

夕方になると、胸が重苦しくて痛くなり、

突然顔から汗が文字通り滝のように異常に出て、止まらなかった。

過労で自律神経が壊れているのは明らかだった。

心療内科に通院し、抗ウツ剤や抗不安剤や睡眠薬がみるみる増えて、

ついには一日30錠以上飲むまでになった。

休日返上で身体を壊すまでして働いた所で、何も変わりはしない。

過労死のニュースがぼんやりした頭をよぎる。

錯綜(さくそう)した利害と魑魅魍魎(ちみもうりょう)の政治家達、

保身にひた走り、酒と女で憂(う)さを晴らす同僚や上司。

所詮、悪習を踏襲(とうしゅう)する以外に大したことは何も出来はしない。

この国はアメリカのようにCHANGEすることなどは無い。

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