紅き天
「内緒だって言ったでしょう?」



疾風は宗治の耳元に囁き、ギッと睨んだ。



「そうだったか。」



宗治はとぼけて視線を外し、サラサラと流れる川に目を向けた。



「静乃、さっきのは父様のでたらめだからな。
俺はお前なんかと結婚なんかしない。」



照れ隠しに静乃を怒鳴り付ける疾風をこっそり観察し、昔の自分そっくりだと笑ったのは内緒だ。



それにしても、もっとマシな逃げ方は無いのか。



静乃が泣きそうだ。



…この二人、バレバレだっちゅーの。



野次馬心が宗治の唇を尖らせた。





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