紅き天
個室に通され、疾風は宗治と一緒に相手方を待った。



ところが、約束の時間を過ぎてもやって来ない。



待ちたくもない相手を待たされ、疾風はイライラと机を叩いた。



「遅い。」


「とんだ阿呆だな。」



宗治も言った。



殺し屋たる者、時間厳守は当然、下見の時間も折り込んでおかなくてはいけない。



なのに、遅れるたぁなんてこった。



2人のイライラが極限にまで達した頃、ようやく相手方が到着した。



しゃなりしゃなりと着飾った娘を連れ、親バカそうな親父が宗治に笑いかけた。



「どうも、市松殿。
本日はお日柄もよく…。」



取り敢えず、第一印象阿呆決定だ。



疾風は笑顔を引きつらせながら記憶に刻んだ。



大幅に遅れてきて謝罪も無し。



かと思えば、お決まりな挨拶文句を延々と喋りまくる。



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