クレージな犬
ヤツだ!
 この辺りって、昼間でも人やクルマの行き来が少ない。

 夜なんか不気味なぐらい静かだし、今の時間帯でもあまり見かけない。

 そんな静寂の中をオレは1人、妄想(何の妄想かなァ?)に浸りながら歩く。

 すると、或る邸宅の前に来た時…

 ワオォォォォォーッ!

 オオーッ!

 静寂を破る、哺乳類生命体のカン高い鳴き声!

 ヤツだ!

 毎日、オレがここを通る度にすっ飛んで来て、吠えまくる。

 ヤツは四つ足で歩く、全身白毛で覆われた地球内生物。

 尻尾を持ち、耳がピーンと尖った奇怪(?)な生き物だ。

 ヤツらのような種族はワンと言う以外、言葉を発しない。

 こちらから…

「おはようございます。イイ天気ですネェ」と、挨拶したって…

「ワン」って、返って来るだけだ。

 人類種族の生物学説上では、ヤツらは『犬』と呼ばれている。

 しかも、外来種のようだ。

 オレが家の門の前に来ると…

 ワンッ!! ワンッ!!
 ワンッ!! ワンッ!!

 ヤツめ、狂ったように走って来てはオレに向かって吠えまくるんだ。

 その吠え方なんて、フツーじゃない。

 明らかに、オレを敵視している。

 コイツ…

 オレに対して宣戦布告しているな?

 オレはその場に立ち止まって、足をトンと地面を叩いてみる。

 すると…

 ワッ!! ワッ!! ワッ!! ワッ!! ワッ!! ワッ!! ワッ!!

 コイツめ、歯剥き出して興奮するんだ。

「バカ犬めが!」

 オレは笑うだけ。
< 2 / 6 >

この作品をシェア

pagetop