先輩と私の集大成
橙色の先輩


ひゅう、と冷たい風が吹いた。
その寒さに目を覚まし、重い目蓋をゆっくり開く。

ぼんやりと霞んだ景色。目の前に人影らしきものがあった。
それに驚いたわたしは衝動的に殴りにかかってしまった。



「ぬおあああ!」


「うおっ?!」



わたしのパンチは見事ストライクして、殴られた人は倒れた。

めりっという音がして、少しだけ罪悪感を感じる。でも寝込みを襲うのが悪い!



「(ん?寝込み?)」



そういえば、ここは



「屋上…?」


「そうだよぉ…ねえ君、いきなりひどいんじゃない?」



むくりと起き上がった痴漢。
いや、痴漢じゃない。この人はうちの学校の生徒だ。

げっ…!上履きの色からして、先輩だ。



「もうこんな時間だよ。だから起こしてあげようとしたのに…」



頬をさする先輩。空は夕焼けで、橙色。
先輩の髪も空と同じ橙色で、すごく不思議な感じ。
素直にきれいだと思った。



「あ…ご、めん、なさい!寝ぼけてて、」


「まあ、しかたないよ!びっくりさせてごめんな。これからは寝過ごさないよーに気をつけろよ〜!」


「あ、ありがとうございました!」



手を振りながら屋上をあとにした先輩。その橙色から目を離すことができなかった。

名前も知らない、初めてあった先輩。そんなあなたに見惚れてしまった。
願わくばもう一度あいたい。

今頃殴ったことを後悔した。



「野蛮な女だと、思われただろうなぁ」



ひゅう、とまた風が吹いた。

まだ春だというのに、夕方になれば肌寒くなる。わたしは足早に屋上を出た。

昼休みに屋上で昼寝をしたまま寝過ごしてしまったわたし。
そういえば先輩は何してたんだろう。

わたしと同じ、サボリかな。そう思うと自然と笑みがこぼれた。




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