平安恋物語
一条壬影……。確か藤原道長の側近だった方だ。武術から演舞まで器用にこなし、容姿も整っていて愛妻家と完璧な人だ。
俺も幼いころから、彼に武術からなにまで教わってきた。俺にとっても、大切な方だ。
「実は一条は最近、誰かに命を狙われているようで。すでに自分と妻が死にいくのを悟っていた。しかし、一人娘だけは、道連れにしたくないらしい。……やはりあいつも父親だな」
クックッと喉の奥で笑い、嘲笑うかのように言った。
「その命を狙っているのは、誰なんですか?」
「ああ、楠木の長男坊だ。なんでも、一条に妻をとられただのなんだのと言っていたな」