【短編】しろ犬のしっぽ ~幾多の時間(トキ)を経て~

初めて知る事

今日は、カーテンの隙間から、一筋、朝日が差し込んでいた。

朝の目覚めに、窓を開ける。

早朝から、心地の良いそよ風が吹き込んできた。

冬の口。

珍しく、太陽が雲の隙間から顔を出したので、私は、なんだか良い気分になり、朝の散歩に出かけた。

「やっぱり、風は冷たいなぁ」

再び家へと戻りマフラーを取ると、玄関を出た。

空を見上げ、顔を出した太陽に目を細める。

私は、景色の綺麗な並木道へと歩き出した。

昨夜、雪が降ったのか、道に、うっすらと雪が積もっていた。

雪が太陽の日差しで光り、歩く度にザッザッと足音が鳴った。

朝の、まだ誰も歩いていない綺麗な雪道に、足跡を付けているのが愉快で。

暫く歩くと、綺麗な並木道へと辿り着いた。

「わぁ…」

私は、思わず声をあげる。

並木道の白銀の世界は、格別なものだった。

両わきに真っ直ぐに並ぶ樹々。葉に重なったり、道に広がる雪は、太陽に照らされて、きらきらと輝いていた。

私は、樹々の間に広がる新鮮な朝の空気を一呼吸して、自然の景色を感じ取る様に、歩みを出した。

ザッザッと雪音がする。

長い長い、並木道。

並木道の終わりに向かって、暫く歩いていると、自分の足音に続いて、他の足音が聞こえてきた。

小さな足音が後ろから。

私は、足を止めて振り返った。

「あれ…?」

誰もいない。

でも、後ろに延びた足跡は、私の足跡の他に、小さな足音が点々とあった。

「ん?」

二本ずつではなく、複数。四本ずつのような…

………


「あぁ!」

私は、目を落とし、そして、笑った。


私の足元に、
真っ白な子犬が、可愛らしくおすわりをしていた。


「お前は、昨日、家に来た犬だな?ん?」

私が抱き上げると、子犬は尻尾を振った。

「お前、人なつっこいなぁ」

真っ白な子犬は、真っ赤な首輪をしていた。

「ノラ犬じゃなかったんだな。綺麗にしてもらって、良い飼い主に育ててもらってるんだね。お前、幸せな犬だなぁ」

抱き上げて話しかけていると、子犬が降りたそうにしたので、私は、そっと優しく子犬を降ろした。

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