真夜中の太陽

笑ってそう言うと、永輝はあたしの髪の毛をくしゃくしゃと撫でた。



「……本当に、自分のことは後回しなんだな」

「そんなことないよ」



自分のことを後回しにしたことなんてなかった。

かんなさんという存在を知りながら、永輝と会っていた。

かんなさんがリストカットを繰り返すことを知ってもなお、あたしは永輝に会いたくて、遼太郎くんの家に行った。


そして今だって。

永輝を追い返すこともできたのに、あたしは永輝を部屋に通した。


そういうあたしは、自分を後回しにしてるんじゃない。

自分の欲望を最優先しているんだ。



「柚羽、ごめんな」

「……なにが?」

「昨日のこと」

「……ううん。謝ったりしないで」

< 166 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop