ひまわり


ペラペラ調子よく話すあたしの言葉を、彼が怒鳴って遮った。


思い立ったら、すぐに行動を起こしたい。


そんなあたしの悪い癖が、彼を怒鳴らせてしまった。


今まで、何があっても怒鳴る事はなかったのに――。


彼が思っていた事を、あたしは読み取る事が出来なかった。


彼と接してきて、あたしはもう彼の事をわかっているという、錯覚。


勢いよく立ちあがった彼は、あたしに背中を向けたまま拳を握っていた。


「わり、もう、ほっといてくれ……」


彼の怒鳴り声に怯んで身動きの取れないあたしに、呟くように言った。


そして、足早に去って行く。


一人残されたあたしは、ただ一点を見つめるしかない。


静かなこの空気の中で、彼の怒鳴り声があたしの頭の中で木霊していた。


どうして、彼があんなに怒ったのか。


あたしには正直わからなかった。



あたしの耳から彼の怒鳴り声が離れなくて、全く授業に集中できない。


別に、あんな顔をさせる為に言ったんじゃないのに。


何がいけなかったんだろう。


お父さんとの大切な思い出なら、あいつが楽しく野球をすれば、お父さんだってきっと喜ぶはずだ。


それに、あいつだって野球は好きだって言ってたじゃん。


なのに、あんなに怒鳴る理由がわからない。




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