pp―the piano players―
「俺は、早紀のいない所でピアノを弾くつもりはない」
わたしの手を振りほどき、圭太郎君は立ち上がる。強い語勢で言い放つと、ロビーから立ち去ってしまった。
膝の力が抜ける。ぺたんと座ってしまう。
わたしはわたしの手を見つめていた。圭太郎君の、言葉と行動のちぐはぐさ。
手のひらに、ぽたり、涙が溢れた。
あの日、雨が降っていた。そんなことを思い出す。
「ねえ」
視界に、令依子さんの綺麗な足が見える。声を辿って令依子さんを見上げる。
「立ちなさいよ」
床に手をついて、立ち上がる。酒井君が肩を支えてくれた。
「ありがとう」
「ううん」
酒井君と目が合う。酒井君の目は、まっすぐで優しい。
令依子さんの目は、まっすぐで、力強い。
「あなたは、早紀ちゃん、圭太郎の何なの?」
「幼なじみ、です」
涙は溢れて来ないけれど、目に溜っているのがわかる。すぐそこに水分はあるのに、口が渇いている。
「それはさっきも聞いたわ。良い? あなたは圭太郎の幼なじみなんかじゃない」
令依子さんは長い指で髪を掬い、耳にかけた。
わたしの手を振りほどき、圭太郎君は立ち上がる。強い語勢で言い放つと、ロビーから立ち去ってしまった。
膝の力が抜ける。ぺたんと座ってしまう。
わたしはわたしの手を見つめていた。圭太郎君の、言葉と行動のちぐはぐさ。
手のひらに、ぽたり、涙が溢れた。
あの日、雨が降っていた。そんなことを思い出す。
「ねえ」
視界に、令依子さんの綺麗な足が見える。声を辿って令依子さんを見上げる。
「立ちなさいよ」
床に手をついて、立ち上がる。酒井君が肩を支えてくれた。
「ありがとう」
「ううん」
酒井君と目が合う。酒井君の目は、まっすぐで優しい。
令依子さんの目は、まっすぐで、力強い。
「あなたは、早紀ちゃん、圭太郎の何なの?」
「幼なじみ、です」
涙は溢れて来ないけれど、目に溜っているのがわかる。すぐそこに水分はあるのに、口が渇いている。
「それはさっきも聞いたわ。良い? あなたは圭太郎の幼なじみなんかじゃない」
令依子さんは長い指で髪を掬い、耳にかけた。