pp―the piano players―
 そこに書かれている日付と、開いた手帳の中を見比べる。
 五月三日、私の予定には小さく丸印が付いている。


「何の予定だよ」
 電話の向こうから、圭太郎君のちょっと膨れた声がする。
「高校の友達と会うの」
 私は、当たり障りのない答えを探した。けれども、良い耳を持っている圭太郎君には動揺も聞きわけられてしまう。

「……酒井か」

 低い声。どうしてそんなに怖い声にしているの?

「お茶して、大学の話をし…」
「嘘でも否定しろよ」
 そのまま、電話が切れた。ツー、ツー、ツー。

 ツー、ツー、ツー。

 私もそっと、電話を切った。
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