時計塔の鬼
昨日アノ後。
葉平を見送った後、私はドアを開け、すばやく中に入った。
次いで、ドアの鍵をしっかりとかけ、開かないことを確認する。
そして――、持ち堪えられず、ズルズルとその場に崩れ落ちた。
それからガクガクとする足を叱咤しながら必死にベッドに向かい、布団に包まって眠りを待った。
けれど、怖くて怖くて、熟睡なんて、できなかった。
明け方になってやっとうとうとし出したくらいだったから。
今朝になって腫れた目に気付き、必死に化粧で誤魔化そうとの努力はした。
「コンシーラーの意味ないわよ、それ」
けれど、歩美にキッパリ駄目出しされてしまった。
今朝の苦労をどうしてくれよう。
どうしようもなく放置しようとした、見るも無惨な私を歩美は職員用女子トイレへと連れて行き、なんとか見れる程度にまでしてくれた。
歩美は何かと手先が器用で、こういう“女!”という手のことには特に強かった。
「高校生に気を抜いたらダメだからねっ!」
「それと化粧って関係あるの?」
「あるに決まってるわ! よく考えてみなさいよ。昨今、ケバいのや、不自然なナチュラルもどきの化粧をしてる女子高校生によ? “私は化粧は下手なんです”なんて示したら……」
「なめられちゃうってこと?」
「そう、その通り!」
わが意を得たりとばかりの口角を引き上げた歩美の笑みに、ついつい吹き出してしまう。