時計塔の鬼
苦手な人種ってのはいるものだから。
“仕方ない”と黙って傍聴したままでいた。
すると三人の中で一番小さい人からためらいがちに問われた。
「沖田さんは好きな人いるの?」
好きな人……?
「私にそんなの、いるわけな……」
突然、脳裏を巡ったものが、続くはずだった私の言葉を消した。
黒い髪。
緑がかった黒の瞳。
見上げなければならないほどの長身。
悪戯好きですぐからかうくせに、話しているといつの間にか楽しくなる。
シュウが浮かんだ。