時計塔の鬼
――ポコッ…
――ブクッ…
深海の底から湧き上がる空気の泡のように、真っ暗だった俺の視界を、色が駆け巡りだした。
赤、白、翠、蒼、朱、紫、黒、青、紅……。
様々な色たちは、俺の世界に落とされた絵の具のよう。
一つ一つ、それぞれに思い出を携えて、大切な記憶を携えて、巡りだす。
『でも、よかったわぁ。ちゃんと、来て』
晴れやかに笑った、懐かしい人間。
死んだと思っていた少女は、すでに自分の子どもを持つにまで成長して、再び俺の前へと現れた。
正直に言うと、俺も、嬉しかった。
また会えて、よかった。
『うっわ~、めっちゃかっこええなぁ……』
次に浮かんできたのは、スキンシップが激しくて、さくらにそっくりな言動の少女。
思えば、顔立ちや声も、似てるな。
抱き付かれるのは、正直嫌だったけど、その少し高い体温は、気持ちよかった。