時計塔の鬼
「どうしたんだ?」
声をかけられて、ハッとした。
ジッと凝視してしまっていたらしい。
不思議そうに、面白そうに、彼は私を見ている。
「! あ、あのの、……あなたは、誰、ですか?」
そう、問い掛けるのが正しいような気がした。
だって、この男の人は美しすぎるから。
――ビュゥゥゥ
風が吹いた。
夏とは違って、湿っていない、乾いた風が。
風に髪をゆだねたまま、その形の良い唇は形を変える。
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