キミノタメノアイノウタ

「……い…」

思い出の中を旅していた俺を現実に引き戻したのは。

「…と……わ…」

……やっぱりあいつだった。

「おい、そろそろ起きやがれ」

呼び掛けても反応がないことに痺れを切らしたのか額をペシンとはたかれる。

(もうちょっと優しく起こしてくれてもいいのに)

まあ、相手が相手だけに淡い期待をするだけ無駄だということか。

俺はゆっくりと目を開けた。

「よう。お目覚めか?」

侑隆は団扇で俺を扇ぎながら淡々と言った。

「侑隆……俺、どれくらい寝てた?」

額に置かれた濡れタオルをどかしながら尋ねる。タオルは体温ですっかりぬるくなっていた。

「まあ、一時間くらいだな」

眠っていた時間は思っていたより短かったようだ。

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