キミノタメノアイノウタ

「じゃあ、俺も帰るか。あの青春小僧にお説教もかましたしな」

タツさんはビールを一気に飲み干すと、ご馳走様と呟いてコップをテーブルに置いた。

「いいよな、あいつらは。ひたすら、がむしゃらに今を生きてる感じがたまんなく青臭くて」

奏芽くんの分の食器も一緒に洗いながら、タツさんは心底羨ましそうに言った。

大人になったからこそ余計に思うのかもしれない。

……今を生きるということがどれだけ難しいことか。

奏芽くんも、瑠菜も。

この時、この一瞬を生きている。

(俺はどうだろうな……)

侑隆が奏芽くんに浴びせていた言葉はかつて、俺自身に向けられていたものだ。

そして。

……俺は今でも自分の道を決めかねている。

< 73 / 409 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop