清皇学院記
「さぁて」


 玲華はその人から目が離せ

ないでいた。目には涙がどんどん

溢れてくるし、今にも泣き崩れて

しまいそうだった。


 その人は部屋の電気をつけると

玲華をソファの上に座らせた。

「こんなにしたのは神楽だろ。

ったく、女にここまでするかよ」


 玲華の口に貼られていた

ガムテープをゆっくりとはがし、

手足を縛っていた紐を解いてくれた。


 いつもの玲華だったら、

この隙に逃げられたかもしれないが、

玲華は金縛りにあったかのように

動けないでいた。

「まずは自己紹介だ。

俺は瀬戸だ。聞いたことねぇか?

比波の瀬戸だよ」


 玲華は口がきけないでいた。

ぶんぶんと首を横に振った。

「蓮の女だろ?聞いたこと

あると思ったのにな」

「な、…ないです」

 声は生まれたての子羊のように

震えて、小さかった。

「なぁ」


 そう言って、瀬戸は玲華の肩に

腕を回す。


 
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