魔女の瞳Ⅵ
プロローグ
私は知っている。

時々梟の使い魔、長老が誰かと『念話』の魔術で会話しているのを。

『念話』は遠隔地の者と、文字通り思念によって会話する魔術。

現代ならば電話やメールで話せば済む事だけど、その昔、遠く離れた者との通信手段が手紙しかなかった時代、そして連絡を取り合った物証が残る事がまずい時など、この『念話』の魔術は重宝した。

なにせ何の道具も必要とせず、どんな場所でも証拠を残さず会話が出来るのだから。

だから、私が長老の『念話』の魔術に気づいたのは本当に偶然。

たまたま夜中に応接間を覗いたら、長老が誰かと話していたのだ。

…『念話』は声を発さなくても会話できる為、誰と話しているのか、何を話しているのかさえ外部の者には理解できない。

ただ、長老の魔力の発動により、『念話』を行使しているというのがわかるだけだった。

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