魔女の瞳Ⅵ
「全く」

ゆるゆると首を横に振り、お母様が溜息をつく。

「随分と嫌われたものね…私は魔術の使い手の頂点に立つ『魔女帝』だというのに…」

そんな隙だらけのお母様に。

「やる気あるのかよっ!」

ジルコーが飛びかかった!

まさしく狼そのものの鋭い牙を剥き出しにして、お母様の白い首筋に食らいつく!

その突進力はお母様の障壁すらも突破し、確実に柔肌に牙を食い込ませた!

…筈だったのに。

「ちぃ…」

ジルコーが舌打ちする。

牙が捉えた筈のお母様の姿は、陽炎の如く揺らめきながら消えていった。

「幻術か…」

「ご名答」

ジルコーから少し離れた場所に、お母様が姿を現す。

「それにしても私の障壁を突破するなんて…見込みがあるわねジルコー君」

「…そりゃどうも」

軽口を叩きつつも、ジルコーは悟っていたに違いない。

気配すら読ませずに幻術に摩り替わった、お母様の実力を。

< 39 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop