heaven
禁断
何度、何度何度呼びかけたか、知れない。

「リフ! リフ、
リフ……!答えろ!…」

ぐったりと、目を閉じたまま微動だにしない
冷たい彼の体をゆすり続けた。
動かないと知りながら、何度も何度も呼びかけた。

また笑ってくれるんじゃないか
また、弱い僕を叱るんじゃないか
そんなくだらない幻想を抱きながら

彼のむしられた血まみれの翼を抱いた。

「キラさん、落ち着いてください」

医療班は取り乱すキラを抑える。
今までこんな上司は見たことがなかっただろう。
取り乱し、涙で顔を汚し、
顔を真っ青にして震える
一人前の天使が、体裁を気にとめもせずに
一人の部下のため泣き続ける。
そんなことは今までに無かった。
特にまじめな性格のキラなんて
自分の感情を吐露することなんてほとんどなかった。

「運んでください!」

医療班の一人が叫んだ。
キラが抱きしめていたリフの体をキラの腕から奪う。

「……ッ、どうして」
「分かっているでしょう!
このままでは魂が魔に食われる恐れがありますから」

険しい顔で医療班の一人が叫んだ。
間違いではない。
まれに天使の霊魂を喰らう魔もいる。
狙われることもないとは言い切れない。

「……ぁ、…っ、……」

声にならない
嗚咽を繰り返していた。

おそらく、こんな喪失感は初めてで。
もとより一人で生まれ、一人で育ってきたはずなのに
今更一人が怖いはずはないのに。
泣くしかできなかった。

大切なものを失ってしまった。
大切な人を失ってしまった。
その事実を受け止めろというのは
あまりに酷なことだった。

「僕は耐えきれない」

―――― なぜ

己の欲望のままに狩る者たちなど

滅びてしまえばいい。

病的なまでに憎しみがあふれたとき
赤くはれ上がった彼の目に狂気が宿った。

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