抱けないあの娘〜春〜
息を切らしながら、私のそばに駆け寄ってきた。


探して来てくれたんだ。


安心したのと怖かったのと、野球の練習着を着た浅黒い肌の彼の頬に伝う汗が綺麗で…つい涙が溢れた。


さっきグラウンドで顔を洗ったまま拭くこともしない彼を綺麗だと思った。真っ直ぐな目、すらりと高い背、広い胸。


菖汰が彼に送ってくれなんていうから、つい恥ずかしくなっちゃって…


私、逃げるように走り出したんだった。


そんな彼に突然抱きしめられた。


ふわりと、すべてから守るような優しい抱きしめ方で。


冷えきった体に、彼の体温が伝わってくる。


私、守られてる…




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