抱けないあの娘〜春〜
どれくらいの時間だったろうか。
一瞬のような永遠のような…さつきはこれが夢なのか現実なのか理解出来ず、体がふわっとした感覚に戸惑っていた。でも不思議と恐怖は無い。むしろ…またあの紅梅の木の下で感じた感覚と同じで、包み込むような高村の腕の中が心地よく感じた。
「ご、ごめん、いや、すみません。あの…つい…守ってあげなくちゃって…ってあの!!」
うつむいていた高村さんが真っ直ぐな瞳で私をみた。
「僕、初めてさつきさんに会った時からさつきさんが頭から離れません。完全に惚れてしまいました。諏訪キャプテンのお許しも無いのに、勝手なこと言ってるのは承知の上です。でも…あなたが好きなんです!!」
いきなりのキスと告白。
さつきの瞳がさらに大きく開き、涙が溢れ出す。