【完】キス、kiss…キス!
時刻は9時55分。ギリギリだ、もうホント、滑り込みセーフだよ。


朝ごはん食べてる時間なんかない。デート中にお腹の虫が鳴ったらどうしよう。


私は暗い茶色の髪の毛をかなり上でおだんごにしながら、そんな色気の無いことを考えてしまう。


スプレーで固定している途中で、チャイムが鳴る。時刻は10時。律儀に時間通りに来る良い子なんて、ナオちゃんしかいない。


「姫さーん、まだぁ?起きてる?」


「は、はいはいはーい!只今!行きます!」


私はスプレーを化粧台に慌てて置いて、ハンドバッグを握り、玄関までパタパタと走っていく。


ナオちゃん、どんな反応すんのかな?


ちゃんと、可愛いって思って貰えるのだろうか。心配で心配で、胸がぎゅうっと苦しくなって、胃酸がこみ上げる。
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