【完】キス、kiss…キス!
振り返った目線の先、俺の後ろからはふらふらと千鳥足で進んで来る人影からは、世の中を罵る声や、時折鼻を啜る音。



普通の人なら、怪しいと思って無視するんだけど、俺、ほっとけないタイプなんだよね。


昔から幼なじみの早苗に『尚志は損するお人好しだよね』なんて良く言われるくらい。


俺は、ほっとけない気質の自分を恨みながら、後ろに向かって歩いていた。


「おーい、大丈夫、ですか?」


俺はその人の腕を取り、自らの首に腕を回す。


酒臭いのはさておき、この柔らかな感触。甘いシャンプーの香りに、視界はくらいけど感づいた。……この人、女の人だ。


女の人なのに、スッゴいこと叫んでたなぁ、と呆れながら歩いていると、高架下を抜けて街灯に照らされた。


青白い夜の光に担いだ女の人が照らされ、その全容が露わになる。
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