腕時計
思い出
次に目が覚めた時、時計を見ると深夜0時をまわっていた。


「うわっ、もうこんな時間。あっしまった、ドラマの最終回見逃しちゃったよ。」


1階に降り、リビングへと続くドアを開けると真っ暗だった。

母は夜勤のためいない。父はオレが子供の頃母を置いて他の女とどこかへ行ってしまった。
オレには妹もいたが、病気で死んでしまった。
それからというもの母は笑顔を失い、あの日以来笑うことはなかった。黙々と働き、残ったオレを養ってくれている。

オレはといえば、学生時代はグレにグレて母を困らせ、結局就職もできずに、バイトを転々とする日々だ。

ぐぅ〜

不意にお腹が鳴る。それはそうだ、昼から何も食べてない。


「コンビニでも行くか。」


オレは着替えて、外へ出た。

その頃、腕時計の長針は12を指していた。


「おう、久しぶりだなー、元気だったか?」


コンビニに行く途中、学生時代のツレに偶然出くわしたのだ。


「あ、ああ。」


ツレは妙に表情が堅い。というか何か恐ろしいものでも見るかのような目でこちらを見ている。


「どうした?そんな顔して。久しぶりの再会じゃないか、飲みにでも行こうぜ」


「いや…。」


すると突然、ツレは走り去って行ってしまった。


「なんだよアイツ、まだあの時のこと根に持ってんのかよ。」


「確かにオレは学生時代アイツに散々なことに付き合わせたり、時にはひどいことをした記憶はあるけど、1番仲良くしてた奴だけあってヘコむよなぁ。」


オレはぶつぶつ言いながらコンビニへと歩いた。
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