Thanks

俺がトップだと一目でわかる棒グラフも。
ロッカーに貼ってあった「ハル」の名札も。

そして、店内での俺の居場所も……

次の日には、全てが消えていた。


『どーゆう事や、太一』

俺は皆の引き止めも無視し、事務所の奥に座る太一の胸倉につかみ掛かった。

『やり方が、あまりにも幼稚やろ』

グラフや名札を剥がす。
事務所に俺の席がない。
荷物が綺麗にまとめられている。

こんなん、小学生の虐めと変わらんわ。

『規則に従ったまでだ。 佳晴だけを例外に出来ない』

んな事、わかってんだ。
俺が悪いって事は、十分に。

ただ、「お疲れ様」と一言言ってくれるだけで気分が違ったのに……

『金輪際、佳晴をHopeに入れる事はない。 一切の関与も認めない』

『な……んだよ……それ』

ただのクビよりタチ悪ぃーよ。
一切の関与とか……
俺の存在自体を否定するような……

『んな簡単に捨てれんのかよ!? 今まで親友だと思ってきたのに!』

ああ、そうだ。
俺はこの気持ちを味わうのが二度目だ。

一度目は親から。
今度は太一からだ。

『俺が逆の立場やったら、絶対に太一だけは捨てられん』

でも、今回のが辛い……
太一は、俺にとって親以上の……

『馬鹿だな、佳晴は』

……え?

『親友だから、手放すんだ』

『な……何言って』

『親友のために、親友の家族のために、俺は佳晴を手放すんだよ』

何笑ってんだよ。
全っ然、意味不明だよ。

『親友の子供には、俺のような思いはさせたくないからね』

あ……
そうだ。

「父親がホスト」という事で白い目を向けられるのはハルだ。

太一は、ずっとそれの辛さを味わってきたから……

『寂しいけど、佳晴とはお別れだ』

『太一…… 俺は、』

『幸せになるんだ。 家族に恥をかかせるなよ?』

たった一人だった。
親友と呼び合える人間は……

その親友と一生の別れを交わした、17の夏だった……
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